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「オカン....」
俺は天井から降りてきた半透明のオカンと静かに向かいあった。いつもの厚い唇がぷるぷると揺れ、べっとりと濡れている。泣いて....いるわけじゃないよな。何しろ唇しか顔のパーツがないからわからん。
だが悪いなオカン。泣こうがわめこうが『シリアスモード』はもう俺には通用しない。そのしんみりとしたセリフに関しては生前verの方を耳にタコが出来るほど聞いている。
むしろ俺はこのチャンスを待っていたのだ。いつも天井から悪口を吐き出しながら漂っている母がようやく攻撃可能な距離まで近づいてくるこの時をな!
「今だ!喰らえオカン!」
シュッ
俺は黒いシャツの胸元から白い長方形の物体を素早く取り出すと片膝をつき、オカンに向けて手裏剣の要領で投げつけた。
『グハァァ!』
凄じい悲鳴。オカンは必殺技を受けた妖怪の様に身体を大きくのけぞらして悶えた。
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