起死回生の手

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「貴様! 何で僕の命令を無視した?」 「無視しては……」 「黙れ! 貴様の意見なんて聞いてない」 独裁者の執務室で、独裁国家序列4位の男が独裁者から罵声を浴びていた。 「今回は見逃してやる、だが次に同じ事をしたらお前だけで無く、お前の家族や直属の部下たち全てを挽き肉にするからな! 分かったか!」 「分かりました。ありがとうございます」 地下数百メートルの場所で2人の男が作業を行っていた。 「そうそのコードだ、それを此方に繋げばシェルターからの指示は地上に届かなくなる」 「こっちは切断しても良いですね?」 「ああ構わない」 地下数百メートルの場所で作業を行っていた男たちが独裁国家序列4位の男に報告する。 「用意は整いました」 「では、始めよう」 独裁者の執務室がある建物の地下数百メートルには、万が一の時に備えて核シェルターが造られている。 ビィィーーーー! ビィィーーーー! その万が一が起こったのか? 突然、執務室のある建物の中で警報音が鳴り響く。 執務室の扉が通路側から開かれ、屈強なボディーガードの男たちが執務室に雪崩こんで来た。 男たちに独裁者が問う。 「何が起こった?」 ボディーガードの1人が返事を返す。 「それは避難が終わってから確認してください。 それより早く核シェルターへ!」 独裁者はボディーガードたちによって 広い執務室の中にある専用エレベーターに押し込まれた。 地下数百メートルにある核シェルターの厚さが10メートルある扉の前には独裁者に絶対的忠誠心を持つ親衛師団の兵士が陣取り、独裁者を迎える。 独裁者が彼等に問う。 「家族は逃げ込めたか?」 「はい!」 「そうか、じゃ扉を閉めろ」 まだエレベーターや階段を使って核シェルターに逃げ込もうとしている、執務室のある建物で働いていた将兵や 役人がいるにも係わらずそう命令する。 分厚い扉は核シェルターに逃げ込もうとしている多数の人たちを押し潰して閉めきられた。 閉めきられた扉を睨み付けた序列4位の男。 男は周りにいる部下に命令する。 「扉を溶接しろ」 暫く作業を見守っていた男は扉に向けて呟いた。 「独裁者様、そこで永遠におやすみください」 ある独裁国でクーデターが起こり、今、独裁者と序列上位の者たちが多数行方不明になっているニュースが全世界を駆け巡っている。
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