黄橡の追憶

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  「でーきた! 見て、小雪ちゃん!」  またしても、トオルの声にハッとする。慌てて顔を上げた私は、トオルに微笑んで頷いた。  やけに今日は、昔のことばかり思い出してしまう。 「これね、この前みんなで行った紅葉狩りの絵だよ」 「そう」 「パパもママも綺麗だねって言ってた、真っ赤で大きな木のところ。覚えてる?」 「ええ」 「ほら見て、上手に描けたでしょ」  そう言って見せてくれたトオルの絵は、ほぼ一色で。 「……ええ、上手だわ」  地面に落ちた葉っぱも、木に生い茂る葉っぱも、すべて等しく――黄色かった。      × × ×
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