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「こっちの生活が充実してるんですね」
「そうね、忙しかったのもあるし親もそんなに言ってこないし」
「何のお仕事か聞いていいですか?」
「アパレルブランドの会社で企画みたいな感じかな。君は?一人旅?」
「まあ半分は仕事で、そのまま休み取って城巡りをしていました」
「仕事?え?いくつ?あ、そういや名前は?私は樹里」
「25です。カイトと言います」
「25で仕事でパリか…ごめん学生さんかと思っちゃった」
「若く見られがちではあります」
苦笑いをした。
「何のお仕事?」
まあこっちも聞いたから答えない訳にはいかないけど…
「同じような感じです」
まあ遠くはないだろう。
「ふーん」
返事が軽かった。
「城巡りはどこ行ったの?」
「モン・サン・ミシェルとフジェールとカーンです」
「モン・サン・ミシェルしか行ったことないや。お城が好きなの?」
「はい、お城もそれを取り巻く時代や街を考えると楽しくて」
「へー、そんな深く考えたことなかったわ」
そう言い終わると彼女の携帯が鳴って、ごめんと言いながら車両の連結部分へ足早に出て行く。
なんだか普通の人として(普通の人なんだけど)普通に人と話せてるのは何年ぶりだろうと少し嬉しく楽しかった。
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