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2人ともかなり酔ってきた。
客も帰りだし樹里さんの同僚もいつの間にかいなかった。夜も遅いのでそろそろ帰ろうとなり店を出る。
「樹里さんの家は近いんですか?」
「うん、タクシーで十五分ほど。今なら十分くらいかな」
ふらつきながら答えた。
「送りますよ。危ないし」
「何言ってんの。君のホテルはすぐそこでしょ!遠回りになるからいいよ、大丈夫!」
「大丈夫じゃないじゃん。ふらついて目もいっちゃってるよ」
歩きながら小さな川沿いの石垣に腰かけた。
「じゃあちょっとここで酔いを覚ますわ」
「水買ってきます」
近くのコンビニで水を買って戻ってくると樹里さんはタバコを吸いながら川の向こうを見ていた。
その腕に着けられた虹色のブレスレットは街灯の灯りできらきら反射していた。
長い黒髪が風になびいて夜景と重なり綺麗だった。
思わず携帯で写真を撮っていた。何故か少し寂しかった。
樹里さんに水を渡すとありがとうと受け取って3分の1ほど飲んだ。
「少し覚めたよ、ありがとう」
「いえ」
「明日帰るんだっけ?」
「はい、夕方の便で」
しばらく沈黙が続き川の水音が耳に入ってきた。
「じゃあ行こうか」
樹里さんが立ち上がる。
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