カイトサイド 1

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「でもそんなこと言ってたら仕事減っちゃうよ。これで何人目よ?いいじゃない可愛いんだし人気もあるし清楚なイメージで定着してるんだし」 「清楚な子はあんな得意げな上目遣いはしない」 「へいへい」と適当に返された。 大きな交差点の赤信号で止まり男性用ヘアクリームの大きな看板が見えた。 俺だ。二ヶ月前に撮影したやつ。 いまだにあれが俺だという感覚がない。 俺なんだけと俺じゃない。 大学時代のモデルから始まり、CM、ドラマ、映画、与えられた仕事を懸命にこなしてきた。 将来についてハッキリ答えが出ていなかった俺は目の前にある与えられたやるべき事を無我夢中でこなしていた。 好き嫌い、楽しい辛い、ギャラが高い安いなんて関係なく。 立ち止まって将来を考えたくないから必要とされることに応えてきた。 気付いたら帽子とマスクなしでは歩けなくなっていた。 もちろん見てくれる人、応援んしてくれる人があっての仕事である。 ある時木崎さんに1番やりたい事は何?と聞かれたが即答できなかった。 はっきり言ってどの仕事も横並びだった。 なので信念を持って演じている俳優・女優の方達には申し訳ない気持ちだった。 軽い気持ちでやっているつもりはないのだが熱く語れるほどの信念がないのである。 そういう気持ちを木崎さんに伝えると
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