カイトサイド 1

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明日から写真集の撮影でパリに行く。 喜ばずにはいられない。 城マニアの俺として撮影はついでだ。城がメインだ。国内・海外いろんな城を訪れた。 城を訪れると心がリセットされるような感覚になる。 本当に何百年前そこに人が住んでいた。 その場所を訪れ、想像する。その人の暮らしを。 凡庸だが『タイムスリップ』ができる。 今日は眠れそうにないかもなんて考えながら旅の用意をした。 案の定寝不足で木崎さんの車に乗った。 寝坊しなかっただけマシだ。 「おはよう」 「おはようございます」 「どうせ城のことばかり考えて眠れなかったんでしょ?」 木崎さんが俺の寝癖を見ながら言った。笑って返事をした。 少し渋滞はあったがほぼ時間通りに成田の出発ロビーに着いた。 「ちゃんと仕事してよ。私がいないからって好き放題しないでよ。終わってからの観光も気をつけてね。変な事に巻き込まれないようにし、、、」 「へいへい。じゃ、行ってきまーす!」 最後まで聞いていたら乗り遅れそうと思い、さっさと車を降りた。 チェックインカウンターへ向かう。 向こうの空港でコーディネーターが待っているらしい。 一人で行けるのも嬉しい。いつも木崎さんと一緒だから。木崎さんと行くとずーーっと付いてくる。 俺のことを誰も知らない場所へ行けるのも嬉しい。 一人で城をゆっくり回れる。いくつ回れるか楽しみだ。いい天気でありますようにと出発ゲートへ向かいながら願う。
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