樹里サイド 1

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樹里サイド 1

仏語「お疲れ様でした」 そう言って会社を出た。 外は木枯らしが吹き始め着ていたためコートの襟元を締め直した。 私が勤めているアパレルブランド“petite(プティットゥ) pause(ポウズ)”が販売しているこのコートは最強だが襟元がまだ甘い。次の企画会議でそこを詰めよう。 なんて考えながら歩いていると 仏「ジュリ!」 後ろから声がした。 振り返るとやっぱりレオだった。 仏「今日も来てくれなかったね、待ってたのに。はいこれ」 そう言って温かいカフェ・クレームを渡された。 カプチーノのようなもので私がよく頼んでいたものだった。 仏「うん、最近忙しくて」 そう言いながら財布を出そうとすると 仏「いいよ、今日はおごり。だからまた来てね。それと、待ってるから」 とメモも渡され駆け足で店へ戻って行った。 『だから行けないんじゃん』と心で呟いた。 半年前にオープンした隣のカフェに毎朝立ち寄り出社していた。レオはオープン当初からいる店員で顔見知りになった。 彼はアニメから日本好きになったタイプで、日本人にも興味があるらしい。 私に何度も携帯の番号を渡してくる。 もちろんかけない。だからまた渡される。 と言う無限ループ。 明日からは少し遠回りだが逆方向から帰ろうと決めた。 仏「あ、明日から出張だ。あー準備しなきゃ」 ぶつぶつ言いながら帰った。
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