私の結婚資金がぁ~(泣)

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男爵令嬢の私は今、イシイオ王国の貴族家に産まれて6歳の誕生日を迎える者全てが入学を義務づけられている王立貴族学院の中庭で、昼食のパンの耳を学院の中庭の片隅にある木立の中で頬張っていた。 男爵令嬢の私が何故パンの耳を頬張っているかって言うと、10年前、学院に入学する前の5歳の時に見た、王太子様と隣国から嫁いで来た隣国の王女様の結婚式が理由。 王都のメインストリートを純白のウエディングドレスを着た王女様と王太子様が、豪華な馬車で王城に向けて進むのを見た私は、私も私の結婚式で純白のウエディングドレスを着て馬車に乗りたいって思った訳。 でも、貴族とは言っても下級貴族の娘の私には無理。 下級貴族の結婚式のウエディングドレスは自分の持っているドレスの中で一番上等なドレス。 馬車も無し、新郎新婦が腕を組んで通りを100メートル程歩き近所の人たちや道行く人たちに祝福されるだけ。 だから結婚資金を貯めて夢を実現させようと決意した。 お小遣いは全部貯金しているけどこんな物では到底足りない、それで思いついたのが毎日執事から渡される昼食代の節約。 家から学院に行く途中にあるパン屋でパンの耳の大袋を買い、家から持って来たお茶でふやかして食べてるの、痩せの大食いの私には1袋じゃ物足りないけどね。 突然木立の側で「クソ!」って声がして私の後頭部に衝撃が走る。 「きゃあ!」 悲鳴を上げ持っていたお茶のカップをパンの耳が入った袋の上に落とす。 何かが当たった後頭部を押さえ昼食の残骸を見つめている私の下に、「誰か居るのか?」と言いながら男の人が近寄ってきた。 男の人は「だ、大丈夫か?」と言い、続けて「すまない、人が居るとは思わなかったのだ」と謝罪する。 私は昼食の残骸から目を離し男の人を見た。 男の人は今学院に在籍している生徒の中で最高位の公爵家の御令息。 御令息はグチャグチャになった私の昼食を見て持っていた保冷ボックスを開く。 保冷ボックスの中には豪華な料理が並んでいた。 「お詫びに此れを食べて、私が調理した料理だけど味は保証するよ」 王国は周辺国から美食の国と言われ、農作物や畜産されている動物たちの品種改良を積極的に行い、それらを使ったレストランが多数あり、上級貴族の人たちの中には料理を趣味としている人が多くいる。 公爵家御令息もその1人なのだろう、本当に美味しい料理の数々。 「美味しい、美味しい」と言いながら保冷ボックスの中身を次々と食す私を見て、御令息が呟いた。 「彼奴も此れくらいの勢いで食べてくれれば可愛いのだけどな、ハァー」 「どういう事ですか?」 保冷ボックスの中身を食い付くした私は御令息に今呟いた言葉の意味を聞く。 それによれば、公爵家御令息と婚約している侯爵家御令嬢が御令息の料理を食べてくれないらしい。 御令息は自分の作る料理を食べてくれない女性とは結婚したいとは思わないらしく、婚約破棄も視野にいれているとの事。 頭に侯爵家御令嬢を思い浮かべる。 私のような痩せの大食いや偏食の為痩せている者を除き、ぽっちゃり型が多い王国の女性の中でスレンダーな体型を維持している数少ない女性。 だから御令息に意見した。 「婚約者の御令嬢はスレンダーな体型を維持している方ですよね? あの体型を維持しているのは貴方様の為では無いでしょうか? 維持する為に努力に努力を重ねていると思います。 先程頂いた料理の数々ですが、私のような痩せの大食いなら良いですけど、普通の女性にとっては使われている油が多く、カロリー過多なのでは無いでしょうか? 料理を趣味にしているのなら、この味を維持したまま低カロリーの料理を作って差し上げたら良いのでは?」 その後暫くの間御令息の料理の品評に付き合ってたら2週間くらい経ったある日、私の下に御令息と御令嬢が2人一緒に現れて礼を言われ、1ヵ月後の卒業式の後の1週間後に行われる結婚式の招待状を手渡された。 ヒィ! 上級貴族の結婚式に招待されるって事は、此れから公爵家と侯爵家が私の後ろ楯になってくれるって事だから嬉しい。 だけど、上級貴族の結婚式に出席する時それなりのお金を包まなくてはならない筈。 私の、私の、結婚資金が無くなるよー。
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