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翌朝、無残に破壊された湾岸の高級住宅地のマンション群の周りを警察と自衛隊の車両が取り囲んでいた。
あの巨大生物はその中央に座り込んで、体を丸めて眠り込んでいる。カメラを取り付けたドローンが数基、巨大生物を刺激しない距離から映像を送っている。
仮設の対策本部テントの中で、陸上自衛隊の隊長と警視庁の警部が、パソコン画面に送られている警察署の取り調べシーンの録画を見つめていた。
画面の中では、取調室の椅子に座った白髪の老人が、容疑者とは思えない不敵な口調で警察官に向かって話していた。
「わしは数種類の動物の細胞と108人の人間の細胞を融合させて、あれを作った。最強のキメラ生物だ。いわば鵺だな」
取り調べの警察官が怒りを含んだ口調で質問する。
「なぜそんな物を作った? あの怪物に32人もの市民が殺されたんだぞ。しかも、そのうち10人は……食われた」
「そうしろというお告げを受けたんじゃよ。超自然的な何かが、俺を選んでお告げを伝えた。こんな事が現代の科学で可能だとは、俺も夢にも思っていなかったがな」
「お告げだと? ふざけるな。罪もない市民の命を奪う理由になるのか?」
「おまえたち公務員に、任期付き研究者の気持ちが分かるのか? 未来も将来もない、希望もない。同じ境遇の若い連中は喜んで体を捧げてくれたよ。これは復讐なのだ。虐げられ、道具のように利用されて生きてきた俺たちの、世間への正当な復讐だ!」
自衛隊の隊長は、動画を止めて吐き捨てるように言った。
「イカれてやがる」
自衛隊の部下がテントに飛び込んで来て大声で叫んだ。
「巨大生物が活動を再開! 都心方向へ向かっています!」
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