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披露宴
「ここでご家族を代表しまして新郎のお父様、高橋伸郎様より皆様へのお礼のご挨拶がございます。
それではお父様お願いいたします」
段上では、彼のご両親と彼と私の4人が並んでいる。
司会は私も良く知っている彼の古くからの親友の高瀬さん。彼の進行で滞りなく進んだ、この小ぢんまりとなってしまった披露宴もいよいよクライマックス。
ここまで本職さながらの進行を続けて来た高瀬さんが、普通は「ご両家を代表して・・・」となるところを、”ご家族を”と言う言葉に置き換えたのも、きっとそれも私への配慮なのだと思う。
「え~この度は…」
静まり返った中、穏やかな口調で彼のお父さんの挨拶が始まった。式場全員の注目が私たち4人注がれている。
披露宴もこの挨拶が終われば、彼の謝辞を残すだけとなる。
隣からは彼のお母さんの啜り泣く声が聞こえて来る。
私の親族でたった一人出席者してくれた、父の一番下の妹、私と丁度一回り違いの叔母も目頭を押さえている。
先週で退社した会社の、普段は男勝りで勇ましい社長までも、今日は一人の女性に戻っているみたいで、ずっと俯いたままだ。
彼のご両親を初め、皆の優しさでこの場が作られている。
皆の思いが、向けられている。
こんな場に立つことが出来るなんて、あの頃には想像も出来なかったこと。とても感謝している。
もちろん、とても嬉しいし、申し訳ないとも思っている。
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