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そう。野々花だけがいればよかった。
その野々花がもういない。
僕は、野々花の隣に寝そべった。
ちょうど連休の最中だ。
もう少しだけ、二人だけでいさせてほしい。
僕は目を閉じた。
数えきれないほど隣り合って寝てきて、彼女の寝息が聞こえない初めての静寂に、涙が止めようもなくあふれた。
おやすみ、野々花。永遠に。
願わくば、せめて君との子供が欲しかった。
目が覚めると、真夜中だった。すっかり寝入ってしまったらしい。
ふと、足元に違和感を覚えた。何かが、僕の体をまさぐっている。
このベッドに、僕以外の人間は一人しかいない。
「野々花!?」
まさか。まさか。
僕は飛び上がり、電気のスイッチを入れた。
ベッドの上には、赤ん坊がいた。
僕は、声をあげることもできずに硬直していた。何が起きているのか、まったく分からない。
なんだ、この赤ん坊は。どこからきた? なぜここにいる?
赤ん坊は服を着ておらず、見たところ、生後数か月といったところだ。まだはいはいもできないで、シーツの上で身じろぎしている。
あたりを見回しても誰もいない。
とにかく赤ん坊を抱きあげ、ダイニングのテーブルに乗せた。ギイギイとくぐもった声をあげるその子は、夢でもなければ造り物でもない。
完全に混乱した僕は、寝起きでうまく動かない頭で、この問題に向き合うことを避けることに決めた。
赤ん坊を再びベッドに戻し、電気を消して、僕もその隣で横になる。
明日の朝、また考えよう。
僕は目を閉じた。
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