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「ったく、いつまで乗ってなきゃいけないのさ」
「あと、一週間。あと、一週カン」
助手くんとカワウソ黒鍵キーは事情も知らず、ソノウチミツカール三世に揺られたままただ博士を信じて待ち続けていた。
「うそでしょう、もうとっくに一ヶ月過ぎてない? さっきまでものすごく熱かったけど今度はまた揺れ始めたし」
「ウソ、よくない。ウソ、つかなイ」
「あーはいはいそうだったね」
しばらく土を掘るような揺れがあったけど、いつだかすぽんと抜けた瞬間があった。今は海だろうか。酔いそうなほど揺れるときもあり、真夏のように暑くて焦げ臭い。幸い温度と書かれたボタンを押したら適温にしてくれる機能があったので助かったけど。
「しっかし暇だなあ」
助手くんは何回見たかわからない映画を繰り返し流して暇を潰していた。
*
ゆさゆさと肩を揺らされる。ん、と久しぶりの太陽の光に目を細めた。
「え?」
いつの間にかソノウチミツカール三世の蓋が開いており、絵面的にまるで棺桶から甦ったゾンビみたいになっている。とはいえ長くソノウチミツカール三世に入っていたので腰が軋んでなかなか立てない。
「あの、手を貸していただけますか?」
肩を揺らしてきたおばさん、日本人とどこかのハーフのような顔立ちの農家さんに手を伸ばす。気付かなくてごめんといった感じでにっこり笑いザルを渡してきた。
「な、なにこれ」
「ヴァーモスファッザーカッフェエングレオ」
「バ、ファ……なんて?」
「ヴァーモストラッバリャアルジュントーザパルチーデジョージ」
「じょーじ? え、名前?」
戸惑っているとカワウソ黒鍵キーが飛び出しおばさんに体当たりした。
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