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「またですか博士、もう研究所の壁が足りませんよ」
「んー?」
生返事をする博士の横で、助手くんに広げられた賞状は警察からの感謝状だ。研究所にあるのはこの一枚だけではない。歴代の賞状たちが色とりどりの額縁にはまって壁一面にぎっしりと詰められている。
「その辺に丸めといてくれ」
「もう、片付けてっていってるのに」
都会の端、林を抜けた山の入り口に研究所はあった。若く、はつらつとした助手くんと、黒髪でダンディなところ以外はいかにも博士という性格の博士。それにたくさんの実験によって生まれた機械が一緒に暮らしていた。
「せっかく署長がくれた名誉が埃まみれなんて。今度また片付けを忘れたら、欠陥住宅を更地に戻す【ケッカンサララ】を無断使用して文化財粉々にしたことバラしますからね!」
「ウソ、ウソ、よくなイ」
「ウソじゃないし、本当にバラすし!」
助手くんの足元にコツンと当たって戒めたのは博士の作った機械のひとつ。両手サイズで、小脇に抱えられる軽量タイプだ。
「猫ふんじゃった弾ける人もよくなイ」
「それ日本人の大半じゃん。カワウソ白鍵キーはうるさいから起動させないでくださいって言ってるでしょう」
ウソ発見器、だけど車輪付きでカワウソをデフォルメした機械だから【カワウソ白鍵キー】。命名はいつも博士のセンス。
「お前も両生類にしてやル」
「はいはい、君はまず防水加工してからその台詞言おうね」
博士の腕は最高だから、この程度の受け答えができる知能はお茶の子さいさい、と言いたいところだが。成功したのはこれが二つ目。人工知能は独学で開発するのは難しい。
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