博士と不思議な道具たち

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「忘れ物をしてしまって。ボールペンなんですけど」  このくらいのやつ、と指でサイズを示す。 「見てないな。あ、これどうぞ」 「おお、ありがたい」  助手くんは残っていた一人用のダンシングインザドリームを貸した。刑事さんはカチャリと腕にはめる。 「うーん。見つかりませんねえ」 「記念品だったんだけど、ないなら仕方ないか」  ふう、と刑事さんは息をつく。するとダンシング(以下略)が震えて、設計図の下に隠れていることを教えてくれた。 「あったあった、では私はこれで」  よかったですね、と助手くんはダンシング(以下略)を預かって玄関まで送りについていく。 「刑事さん」 「はい?」  相変わらず二人用のダンシング(以下略)を細目で見つめながら、博士が声をかけた。 「長官はお元気ですか?」 「……ええ、よろしくお伝えくださいと」  そうですか、と博士は少しだけ手を止める。助手くんが不思議そうに首を傾げると、カワウソ黒鍵キーが足元に近寄ってきた。 「ウソ、ウソ、よくなイ」 「こーら。すみません、社交辞令はさすがに判別できないもんで」 「いえいえ」  刑事さんはにこやかに笑った。カワウソ黒鍵キーは怯えたように震えだしたので助手くんが抱えてよしよししてやる。 「また近いうちに遊びに来るようお伝えください、新作ができそうなので」 「ええ、必ず」 「ぴえ、ウソ、よくなイ」  泣き始めるカワウソ黒鍵キーをなだめながら、助手くんは刑事さんの後ろ姿を見送る。ひゅんと一枚目のドアが閉まりかけたときだった。 「……博士の発明はどれも精巧で正しい」  刑事さんはぼそりと呟く。 「え?」  よく聞こえず、助手くんは聞き返す。 「しかし」  二枚目のドアをくぐることなく、刑事さんは振り返る。その目はギラついていて、助手くんとカワウソ黒鍵キーは「ぴえ」と息をのむ。 「正しいことは正義ではない!」  バン、と一枚目のドアに手をつき怒鳴られ助手くんは腰を抜かした。 「助手くん!」
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