博士と不思議な道具たち

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 その様子を外から見ていた博士と署長はソノウチミツカール三世にそっと手を振った。 「はっはっは、博士も粋なことをする」 「これでも助手は可愛がるのが信条でね」  キラリと眼光鋭く署長を睨んだ。 「いいねえその目。それで、いつから気付いていたんだい――僕もあいつらの手先ということに」 「つい先日、君の仲間がダンシングインザドリームについて尋ねてきた頃だ。探査機の精度をわざと確かめたね?」  署長は胸ポケットに手を当てた。ダンシング(以下略)の模倣品をこっそり造り、署長は自分の居場所をテロリストに伝えるべく身につけている。そのことも博士は見抜いていた。 「ああ、博士、あなたは賢すぎる。だがありとあらゆる事情に精通していると踏んだのは見込み違いだった。このままでは世界中の犯罪がなくなり、世の中の均衡が崩れてしまうだろう。他でもない、この日本から徐々にね」 「だから、私ごと消すと?」  ごくりと博士は喉を鳴らす。 「ああ」  つつつと冷や汗が首筋を伝っていくのもしっかり感じた。 「初めからそのつもりだったのかい」 「いやあ、まさか。言ったろう。あなたがこちらの事情も汲んでくれていたらこうはならなかった。少なくとも存在を消そうとは思わなかったさ。残念だが……おや、そろそろかな」  小さな居住空間が揺れ始め、土埃が降ってきた。 「お迎えが早いようで」 「おかげさまで」  署長はにっこり笑う。 「でも、あちらさんは君ごと吹き飛ばしてしまうようだよ」 「なに?」  ピクリと眉をひそめたことを確認して博士はもうひとつのソノウチミツカール三世に飛び込んだ。 「では、おさらば」 「おい、待て、待てええええええ!」  駆け寄ってくる署長を横目にがちゃりと蓋を閉める。 「中止だ、中止しろ! ええい、聞こえんのか!」  署長の叫び声は届かない。代わりに胸ポケットのダンシング(以下略)模倣品がぶるると震えた。 「対象の脈拍に異常発生。S-065機の対象:ニの体温を再確認。地図を示します」 「隊長、長官から合図がきました!」 「ようし、撃て!」  ボフンと鈍い爆発音が鳴る。ゴゴゴと低い地鳴りが土をふるわせ、ドカンと高く土埃が舞った。 「な、なんだ?」 「お父さんみて、埃がキラキラしてる!」 「不発弾か?!」  森から一番近い住宅地では多くの住民がその様子を目撃したという。 「それにしても、キレイだな」 「夕日と埃がマッチして美しい」  皆一様にスマホを取り出し、写真を撮り始めた。SNSではトレンド入りするほど大きく話題を呼び、後にダンシングインザドリームという別名がつくほど有名な山林の巨大地盤陥没における自然現象として歴史に名を残すこととなる。  なお、この事故をきっかけに警察庁長官は行方不明となったまま、真相は闇に葬られた。
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