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「別に。……やっと今、失恋できた、と思って。一志くんも二人の現実を見てきたらいいよ。自分の好きな人がこっちに向かない辛さを知ればいい。これはお節介半分、負け惜しみ半分だからね」
「……ごめん、な」
「謝らないで。あたしだって、一志くんを条件で見てたんだから。最初からフェアでも、純粋でもなかった。どうせなら、最後までクズでいてよ……。そうやって、中途半端に甘さを見せるから、沼って言われるんだよ?」
電話が切れた後、紫崎は服を着替えた。
感情は本当に鬱陶しい。
自分の行動までも支配してしまう。
一際長い息を吐き、紫崎は扉を開け、残暑眩しい光の中に足を進めた。
目的地と、先の行動は決まっている。
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