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―――無事に昏と連絡が取れた。倉持さんとぎくしゃくした事情を話すと、婚活相談としてアドバイザーと個室で話ができるよう予約を取ってくれたよ。来週に話をする予定。
寺島まふゆからだった。
―――良かったな。
裏返し、机においた。
ふらりと席を立ち上がり、天井まである書架ゾーンに行き、近隣のデートスポットが載っているであろう情報誌を手にした。パラパラとめくり、閲覧自由を確認し、席に戻ろうとすると、高いヒールの音がした。
規則的で、高い振動。
そのリズムの既視感から隠れるよう、先ほど腰掛けていた椅子に滑り込んだ。
いつもはひとつに束ねていた黒髪は解かれ、毛先は巻いている。つやつやと揺れる細い髪に、白のオーバーシャツではなく、甘めなシフォンブラウスに細いプリーツの入った薄緑のロングスカートを身につけている。普段は隠れている鎖骨がVネックであるため露出していた。程よく抜けた女の雰囲気。化粧がいつもより丁寧にされているためか、顔の印象がはっきりとしている。
―――綺麗だ。
でも、安易に口に出せない。この格好を深沢のために整えたのかと思うと、その事実にうちのめられそうになる。
「ミーコ、ここ先月オープンしたばかりだよ。知ってる?」
「いえ、初めて来ました。なんだか、近未来みたいなデザインですね」
「近未来? あんまりこんなデザインないよねぇ」
「天井を見てください。植物と装飾ライトが一緒になっているのは初めて見ました。なんか植物園と本屋さん、カフェが混ざったみたいです」
軽快に会話を交わすふたりには、もう第三者が入っていけないような親密さがある。
ここまで来て、感情のままに居座っている自分がアホらしい。
大きくため息を漏らし、紫崎は深沢と海李子が席を決める前に立ち去ろうとした。
―――その時。
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