417人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
「……お知り合い、ですか?」
海李子の戸惑う声を初めて聞いた。
紫崎は店から出ていくタイミングを完全に失い、三人から見えない位置で腰掛けたまま、身を潜める。
深沢、海李子、まふゆはとりあえず座って話すことに落ち着いたのか、各飲み物を注文し、テーブルに座った。通路と観葉植物、頭まで隠れる本棚の隙間から会話と三人の横顔が覗く。
色んな意味で、紫崎の心臓が騒ぎ始める。
「あー、えっと、こちらは寺島まふゆさん、そしてこっちはーーー」
穏やかな表情と声で紹介する深沢の本心は全く透けない。
「……昏くん、私は寺島さんのことを知っています」
「あぁ、そうだったね。えーっと……」
「なんで、昏と倉持さんが一緒にいるの?」
まふゆは並んだふたりをじっと見た。
「僕と倉持さんは同期だからねぇ、それにーーー
「同期だけ、ですか?」
海李子の声は少し震えていた。
紫崎は、嘘だろ、と首を振る。
一番に気を向けるべきなのはこの場を和やかに済ませることではなく、海李子を悲しませない行動を取ることだ。
紫崎はイライラしながら聞き耳を立てる。
最初のコメントを投稿しよう!