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「えっと、ミーコこっちは……」
「私は昏と同じ大学で、アウトドアサークルのO Gとして顔を出していました。准教授に同級生もいたし、学生からキャンプギアの使用について使用レビューを集めてたりしてね。これはまだ言ってませんでしたね」
「あ!」
海李子は思い出したように声をあげた。
「……だから、結婚の条件に、一緒にキャンプができる人、ってあったんですね……」
「そう。だから、条件ばっかりに目を向けていたけど、上手くいかない婚活にイライラして……、1ヶ月前、倉持さんに恋人はいますかって性格悪い八つ当たりをしちゃった……、すみません」
「いえっ、その、こちらこそあの時の対応、申し訳ありませんでした。私が未熟でした。人は条件だけで結婚を決めるものではないのに、条件や価値観の一致やデーターに頼ったお話しかできず、感情を置き去りにしていました。婚活は“ドキドキ”も大事なんですよね?」
もじもじと海李子が口にすると、まふゆは、そうなの、と声をあげた。
明るく快活な彼女は、本来の自分を取り戻したように、照らすよう笑う。
「倉持さん、……インスピレーションって言った意味、伝わりました? あの時、私、忘れられない人っている? って聞いたでしょ?」
「はい。覚えています」
「良かった。実は、婚活はもうすっぱり諦めて、もう一度、そっちの恋を頑張ってみようかなって思ってて……」
「恋、ですか……。わかりました。私で出来ることがあれば、マッチングスキルを使ってお手伝いさせて頂きます。寺島さんは私が入社してからずっと担当させていただいている方なので、退会されても、私のできることであれば、力になりたいです」
海李子の声が輝く。
紫崎は事の成り行きを会話のままにさせている深沢を見た。
自分が元彼であるということを忘れているのか、なんなのか、呑気にコーヒーを口に運んでいる。
「えーっと、では、その方との共通点とかありますか? まず、忘れられない方の今の情報を集めないと、ですね」
ハキハキと喋り、メモを取り出した。
「では、まず、職業とお名前をーーー、」
紫崎はその様子を見て、頭を抱える。
「ここに、います」
「え?」
「へ?」
深沢と海李子は同時に声を出し、辺りを見回し始めた。
滑稽にしか見えないやりとりに紫崎は席を立つ。そのまま、三人の座っているテーブルの横へ。
もう、我慢の限界だった。
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