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真剣に覗き込まれ、視線を安易に外せない。
「何が足りない? お前だけに、大事なことは言うし、知ってもらいたい。あいつが先にみーこの恋愛回路に入り込んだのかもしれないけど……、俺のことも、考えて、くれ、ませんか?」
言い切った後、紫崎は、もう限界、と顔を海李子から離した。
「今の格好、綺麗すぎ……。良い匂いするし。近いと緊張する。……でも、お前とはセフレにはなりたくねぇから、それはしない。つーか、出来ない、が正しいか。手繋いで、抱きしめただけでもう、俺の心臓ヤベェからな」
クレイの地面にしゃがみ込み、困ったように見上げられ、海李子は困惑する。
いつも自信満々で、憎まれ口を叩いているのに、紫崎は真っ赤な顔で海李子を必死で見つめている。
「ほら、せめて鼓動を知ってくれ」
手を取られ、紫崎の心臓に手を当てられる。
心臓がばっくん、ばっくん、ばっくんと拍動で愛を伝える。
「俺を、こうさせてるのはお前、あ〜〜、マジで困った……。俺の心臓どうしてくれんの?」
「どうしてって、そのーーー」
「はっ、え、……ど、うしてくれるはこっちのセリフだけど、なぁ」
肩で息をしている昏が、割り入るようにベンチの横に立った。
いつもの穏やかな表情と髪は乱れ、くしゃくしゃと乱暴に頭をかきあげる。
「人の彼女を勝手に連れてかないでくれる?」
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