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―――条件の話はもういいです。
―――え?
―――倉持さん、こんなこと聞くのは失礼だと分かっているんですが……、今、彼氏居ますか? 忘れられない人とか……。
―――忘れられない人、……いません。
―――そもそも……、恋人、いた事ありますか?
その質問に、海李子は凍りついた。
25年間生きてきて、彼氏はできた事がない。
いつも自分は誰かのキューピッド役ばかりで、ラブレターを渡したり、約束を取り持ったり、カップルが出来るよう、学生時代は各コミュニティーで暗躍していた。カップルを陰で見守ることに徹し、自分の恋愛はそっちのけ。それが生きがいで、友達が幸せそうに彼氏と過ごしていることを見て、満足していた。
恋愛は見る専門で、蚊帳の外で観察している方が楽しかった。それに、誰かと恋人になり、甘い空気になるなんて、どうすればそんなことが起きるのかと、ファンタジーのように遠い世界に思え、想像すらできない。
そもそも恋人をどう作ればいいのか、どんなプロセスを踏めばそこまで辿り着くのかも未知の領域だ。
―――こう言ったら、失礼かもしれないですが……。倉持さんのアドバイスは現実味がないです。
現実味が、ない。
がつんとした衝撃が海李子を貫いた。
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