ep.1 その女、ワーカーホリックです(海李子side)

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―――条件の話はもういいです。 ―――え? ―――倉持さん、こんなこと聞くのは失礼だと分かっているんですが……、今、彼氏居ますか? とか……。 ―――忘れられない人、……いません。 ―――そもそも……、恋人、ありますか?  その質問に、海李子は凍りついた。  25年間生きてきて、彼氏はできた事がない。  いつも自分は誰かのキューピッド役ばかりで、ラブレターを渡したり、約束を取り持ったり、カップルが出来るよう、学生時代は各コミュニティーで暗躍(あんやく)していた。カップルを陰で見守ることに徹し、自分の恋愛はそっちのけ。それが生きがいで、友達が幸せそうに彼氏と過ごしていることを見て、満足していた。  恋愛は見る専門で、蚊帳の外で観察している方が楽しかった。それに、誰かと恋人になり、甘い空気になるなんて、どうすればそんなことが起きるのかと、ファンタジーのように遠い世界に思え、想像すらできない。  そもそも恋人をどう作ればいいのか、どんなプロセスを踏めばそこまで辿り着くのかも未知の領域だ。 ―――こう言ったら、失礼かもしれないですが……。倉持さんのアドバイスは現実味(リアリティ)がないです。  現実味(リアリティ)が、ない。  がつんとした衝撃が海李子を貫いた。
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