ep.1 その女、ワーカーホリックです(海李子side)

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―――いつも条件とか、結婚診断で性格や自分の傾向を調べて、右脳派とか左脳派とか、価値観が合う相手とか、優先順位とか……。もう、疲れました。私はただ一緒に過ごせる人がほしいだけなのに……。そんな基本的な感情、分かりませんか? 条件はもう考えたくないんです。頭ばかり使う恋愛は疲れました……。インスピレーションで恋をした相手と結婚したい……。  インスピ、レーション?  思わずその言葉を口にする。 ―――経験のない人に、この気持ち分かりませんよね……。  肩を落とした寺島に、海李子は何と声をかければいいか分からなかった。  婚活アドバイザーとして、結婚相手に求める条件を「見える化」し、その条件に当てはまる人を会員から探していく。ぴたりと会う相手はまだ見つからないだけで、確率は低くても、お互い譲りあえる部分がある人はいるはずです、と、言いたかった。けれど、寺島が海李子に求めているのは、ひとりの女性としての共感であって、ねぎらいだった。  婚活に疲れた35歳の女性に、彼氏も居ない25歳が実体験を踏まえたアドバイスなど浮かぶはずもない。 ―――婚活はしばらくお休みします。  寺島まふゆは沈黙の後、苦しそうに言い、相談スペースから出て行った。
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