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アルコール濃度が高めのカップ酒と、チーズだか魚だかよく分からない名前のつまみを生活感たっぷりのビニール袋に入れ、挨拶の時には1ミリも動かなかった眉を下げていた。何が彼女をそうさせるのか昏の好奇心がむくむくと顔を出した。
「断ってくれてもいいよ」
と、言った後、本当は断らないで欲しいけどね、と全く逆のことを口走りそうになった。
ロボ子が自室に一旦戻り、社宅のロビーで彼女を待つ間、心なしか落ち着かない気持ちになった。
「お待たせしました」
律儀にお辞儀をし、昏もつられるように腰を折った。
「すぐそこだよ」
社宅前の私道を北に進み、最近出来た創作居酒屋に入った。個室に通され、メニュー表を渡すとロボ子は無表情で、昏に目を向けた。
「……私、就職してから、同期の方と食事をするのは初めてです」
薄暗い居酒屋で、まじまじと見たロボ子の瞳は思ったより大きく、唇はぽってりと色づいていた。背が高く、スレンダーな体型をしており、身につけている白シャツがオーバーサイズであった為、着痩せしているように見えた。
戸惑ったように告げた彼女は恥ずかしそうに顔を伏せた。
はらりとひと束だけ髪が流れるように落ち、細い指で耳にかける。
そのなにげないゆるやかな仕草が丁寧で、繊細で、美しく、つい昏は見惚れてしまった。
ロボ子ではなく、倉持海李子だよなぁ、と彼女の女らしさを目の当たりにし、自然と背筋が伸びた。
本人でさえも気付いていない魅力が彼女には眠っているかもしれないーーー、
と、彼女が弱っている姿を見て、うっすらそう思い始めていた。
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