418人が本棚に入れています
本棚に追加
今どきの草食系だよね、と昏は会社の人によく言われていたが、女性に対しての関心は人並みにある。表に出にくいだけであって、性欲や恋愛に対してドライな訳ではない。
ただその対象が今はいないだけ。
「倉持さんは仕事が好きなの?」
昏が穏やかに問うと、ロボ子は読んでいたメニュー表から顔をあげた。わずかにゆるんだ表情は花が綻んだような華やかさがあった。
「はい。えっと、……分かりますか?」
「分かるって言うか、顔に出てるなぁ」
「私にとって仕事は生きがいです。学生の頃から友達と好きな人がうまくいくように応援するのが好きで、この仕事を見つけたとき、天職だって思いました。相手が喜んでくれたら、自分も嬉しいです。幸せそうなカップルを見れば、こっちも幸せになります」
仕事中は動きもしなかった眉が動き、死んでいた眼がきらきらと輝く。頬は上気し、身振り手振りも大きくなるロボ子は別人かと疑うほど。
カシスオレンジのカクテルと酎ハイを頼み、軽く食事をするうちにロボ子はますます饒舌になった。
「深沢くん、私の武勇伝を聞いてくれますか?」
最初のコメントを投稿しよう!