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「昔からそんな感じだったんだ……」
「深沢くんは、どんな学生でした?」
そう聞かれ、
「僕は……、倉持さんみたいに人の為には動けないよ」
と、つい本音をこぼした。
大学時代はバイトと勉強と恋愛と、バランスの取れた生活を送り、何かを必死に応援し、誰かの為に動いたことなんて数えるぐらい。
彼女は居たが、10歳年上で社会人と学生と決定的な環境の違いで、未来のビジョンが描けなかったのか、大学を卒業する前に振られてしまった。大好きだった彼女を、もう一度振り向かすために必死にはなれず、その力は自分の感情を抑えるために使った。
相手が自分のことを好きっていう“確信”がないと臆病になってしまう。
昏がロボ子の一途さに口を閉ざすと、
「深沢くん……、」
と、ロボ子は昏をうるうるした瞳で見上げた。
艶っぽく見つめられ、昏の心臓が忙しくなる。
まさか、いや、でもな、と何も言われていないのに何故か焦る部分と、やけに冷静にこの後、ベッドで横になる彼女を想像している自分が居て、妄想を振り切るように頭を振った。
「えっと……、何?」
穏やかに笑って、動揺を悟られないようにする。
「あの、失礼だと分かっているんですが……」
「……うん」
「深沢くんは、彼女いた事ありますよね?」
「そうだねぇ、……今はいないけど」
昏は乾いた口に、水を運ぶ。
「じゃあ、経験も豊富ですよね?」
「豊富じゃないよ……、人並みかな」
「人並みですか……」
ロボ子は視線を外さず、そのまま昏を見つめ続ける。
紫崎の読みは外れている。この子が“ない”って?
酔いに混じって吐息のように漏れ出る色気に抗うけれど、目線を逸せない。仕事とプライベートでのギャップが激しすぎる。
「彼氏はどうすればできますか? よかったら……、私に恋愛を教えて欲しいです」
真っ直ぐで誘うような瞳。理性で抑えているものが一気にゆらぐ。
「……えっーと、僕?」
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