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お話をしましょうって部屋に誘って、本当に話だけ? そんな訳ないよなぁ。
いい大人なんだからさぁ。
と、高度な駆け引きをロボ子が持ちかけられ、とりあえず送るよ、と部屋の前まで足を向けた。扉を開け、玄関で別れの挨拶をしようとしたところで、ロボ子がまたしょんぼりとした瞳で昏を見た。
「やっぱり、その……、私ではダメですか?」
男なら誰でも引っかかりそうな蠱惑的な誘い。
エレベーターが廊下の奥で停止する。昏はその音から隠れるようにして、ミーコの部屋に身を潜ませた。
ふわりと匂う、甘いフレングランス。
自分の部屋とは違う、清涼感と甘さが混ざった異性の香りは男の欲を刺激する。
「あのさ……」
襲われても文句は言えないよ? と、言いかけたとき、ミーコが昏のオーバーシャツを握った。身長の高いミーコとぐっと顔が近くなり、ダメ押しのようにミーコが見上げる。
「あの、……嫌、ですか?」
「嫌じゃない」
じゃあ遠慮なく、と昏は柔らかく笑って、ミーコの腰を抱き寄せた。
距離は埋まり、熱を落とすようそっと唇を重ねる。
反応を見るために昏はゆっくりとミーコの頬に手を伸ばす。両手で包むと、誘ったはずのミーコの顔は赤く染まった。湯気でも出そうなまま、伏し目になる。昏が覗き込むと恐々と伺うように顔を上げたミーコと視線が繋がった。
もう一度、昏が唇を寄せるとミーコの目が泳いだ。
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