誠の愛につきまして

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 ひとつ。  おじいさんの家には、いろいろな男性が入れ替わり立ち代わり出入りしていました。夕方に入り翌朝に出ていき、その日の夕方にまた違う男性が……といった感じでした。  夕方、高等学校の下校の際に、おじいさんの家に招かれる男性を見ます。    朝、高等学校の登校の際におじいさんの家から出る男性を見ます。  このようなことが毎日のようにございますと、いったいこのおじいさんは何者なのでしょうと、興味を持たざるをえませんでした。  いろいろな男性。年齢も姿もばらばらでございましたが、皆様、ふしぎと同じ表情をしておられました。  夕方、はりつめた表情でおじいさんの家へ入ります。  朝、うっとりとした表情で外へ出ていきます。  帰る男性の背中は、初々しい少女のような雰囲気がございました。  もうひとつ。  それはおじいさんの姿についてです。  いろいろな男性が出入りするたび、迎え入れるおじいさんを拝見しておりましたが、おじいさんが、どことなく若々しくなっていくような気がしたのです。一日、一日と皺が消えていくようでした。白髪に黒髪が混じりはじめ、身体を覆っていたぜい肉はすっかりそぎ落とされ、すらっとした体躯になっているのでした。  いろいろな男性を見つめるおじいさんの瞳も、最初のころは、ご友人、息子、孫を迎える晩年のおじいさま、という感じだったのに、日に日に黒い瞳に光がやどり、そのまなざしは、きらきらと輝いていました。  服装も、清潔感のあるものに変わっていきました。 おじいさんは、おじさん、と呼びかけられるほどの姿になっていったのでした。
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