誠の愛につきまして

5/15

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 面食らいました。  恋。恋愛。  こちらのことにつきまして、お母さまは寝る前、いつも「誠の愛」というお話をしてくださいました。  お母さまのおっしゃった誠の愛とは。  人生の中で、ただ一人に向けられる、永遠のもの。  高等学校などで、子どもの交わし合う「愛」は、誠の愛ではないということ。  「誠の愛」を感じることこそが、生きている意味であること。  ゆえに、お母さまは20歳の誕生日を迎えるまでは、と。僕に、恋愛をしてはいけないとおっしゃいました。  だから、だめなんです、と正直に答えました。恋愛は、20歳になるまで、お母さまから禁じられております、と。  すると今度は、おじいさんが面食らったような顔をいたしました。ひどく驚いているようでした。  おじいさんは、少し考えてから言いました。 「では、人助けをしないか」と。  人助けでしたら。僕はうなずきました。お母さまから、積極的に行うようにと言われております、と。  かばんの中からお母さまの愛読書。マザァテレサの伝記を引っ張りだしてみせました。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加