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「君とは相性がいいみたいだ。もし、よければなんだが。私の希望の年齢になるまで、たのんでもいいかい」
おじいさんはおっしゃいました。
それからは、ほぼ毎日おじいさんの家に通い詰めました。お母さまには友人の家で試験勉強しておりますとお話していました。または、人助け、と。
おじいさんの姿がどんどん変わっていく様を、とても近くで見ておりました。みずみずしい肌が、蘇っていくのを肌で感じました。
おじいさんの肢体が、しなやかに、やわらかくくねる姿を美しいと思いました。
時々、戯れにおじいさんは小説のような愛の言葉をささやくようになりました。
お母さまのおっしゃっていた「誠の愛」という言葉が、ふっと頭によぎりました。
おじいさんの言葉を復唱してみました。
するとふしぎなことに、言葉にすればするほど、その言葉は風となって、熱のこもった部屋に反響いたしました。形となっていくのでした。
僕は、高等学校にいる時も、お母さまといる時も、ずっとおじいさんのことばかり考えるようになりました。
おじいさんは、おじさんからおにいさんと呼ばれる姿まで変わっていきました。
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