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第3話 地獄でまた
刀身を素早く抜く。
腰を入れて一閃。
敵の水月を目がけた刀の切先は、肉を裂き骨をも断ち切る。
俺は、斜め下に刀を振って、刃に付着した敵の血を払った。
「おやすみ」
葬送の言葉を次ぐ。
その繰り返し、繰り返し……
今では遠くなったあの日々。
維新、御一新など如何物だ。
あれは血で血を洗う革命だった。
無血革命とは片腹い。
最も血を望んだ輩がどの顔で和平を説くのか。
俺は、俺達は正義の為に命を賭けていた。
お国のためだなどと言わない。
悪の人斬り集団。
まあ、世間には好きなように言わせておけばいい。
俺の誇りは俺の胸の中だけに。
「おやすみ」と相手を弔ったあの日々。
あの熱は、静かに胸の内に飼っておこう。
地獄で友らに逢うまでは。
「よぉ、斎藤。随分と遅かったじゃないか」
その時になったら、きっとかつての上司は、不敵な笑みで迎えてくれるに違いない。
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