第3話 地獄でまた

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

第3話 地獄でまた

 刀身を素早く抜く。  腰を入れて一閃。  敵の水月を目がけた刀の切先は、肉を裂き骨をも断ち切る。  俺は、斜め下に刀を振って、刃に付着した敵の血を払った。 「おやすみ」  葬送の言葉を次ぐ。    その繰り返し、繰り返し……  今では遠くなったあの日々。  維新、御一新など如何物だ。  あれは血で血を洗う革命だった。  無血革命とは片腹い。  最も血を望んだ輩がどの顔で和平を説くのか。  俺は、俺達は正義の為に命を賭けていた。  お国のためだなどと言わない。  悪の人斬り集団。  まあ、世間には好きなように言わせておけばいい。  俺の誇りは俺の胸の中だけに。 「おやすみ」と相手を弔ったあの日々。  あの熱は、静かに胸の内に飼っておこう。  地獄で友らに逢うまでは。 「よぉ、斎藤。随分と遅かったじゃないか」  その時になったら、きっとかつての上司は、不敵な笑みで迎えてくれるに違いない。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!