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第2話 奇跡の平穏
「愛している」
一日の終わりに、貴女にそう告げてきたのは本心が半分。
俺の「おやすみ」は不吉すぎて、貴女にかけられないのが半分。
愛しい人とともに眠り、子を育み、若者を見守る穏やかな仕事に励む。
このような寧静な日々が己に訪れるとは、思いもよらなかった。
昔の仕事をたまに夢で見る。
まあ、気持ちの良いものではない。
もがいてもがいても、信じた道はいつも閉ざされ、俺達が積み重ねたものは報われぬまま、時代の狭間へと零れ落ちていった。
今思い返しても、ひりつくような怒りが胸を焼く。
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