2 #日向化成

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「最近バイトしてる?」  ひとまずこれが今現在、選択できる質問だろうか。  日向の浮かべた微笑は困っていない。 「気が向いた時にしてるよ」 「いつからしてる?…聞いていいかわかんないけど」 「大丈夫だよ。去年から」 「半年くらい?」 「うん」と、日向は宙に視線を一巡させた。「もう少し長いかな。夏に始めたから」 「…神戸くんに誘われて?」 「うん……そういうことになるのかな……俺から頼んだような気もする」  ゆるゆると首を傾げ、マグのハンドルを撫でながら、いつ再起するかも知れない風情で日向は沈黙した。  それを見ていた数十秒で、30分くらい経ったような心地を橋崎は覚えた。 「きっかけとか、聞いても平気?」  ゆっくりと視線を交わらせ、日向は首を傾げた。 「どこからがきっかけなんだろう……まず、俺と光はD組に入ったよ」  廊下を染める西日の色が目の奥を射った。  上京してきた橋崎には、行き交う全部が知らない顔だった。すれ違う少し背の高いブレザーや、ずいぶん小柄なフーディーも、どこへ入っていくのか目で追ったりしなかった。 「初日に一人ずつスピーチすることになって…どこのクラスもしたのかな」 「え、と。とりあえず俺いたB組は、席立って名前だけ、だったと思う。出身中とか言う人もいたけど、少しだった」  だからほっとしたことも、橋崎は思い出した。  地元民には人気のない小さな公立校、他区や他県からの流入が多く人間関係が薄いという口コミを見て、入学を決めてもいたのだが。
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