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なんだかどうも、意識が褪せるような心地がする。
集団生活とはなんて息苦しいのだろう。
橋崎はグリップを握ってコートに入った。
おねがいしますと言った。
風はなく陽射しだけが強い。
時の流れが滞っているようで鬱陶しい。
合成樹脂の上に立ってまだ2時間も経っていないのに板張りの感触が恋しい。
不可解な物事がそこらじゅうに散らばっている。
賀上はなぜ腐りかけの物ばかり食べるのか。小野はなぜ喋らないのか。六部はなぜ他人の顔をじっと見つめるのか。日向はなぜ公立のFランク高校に通うのか。北園はなぜ一学期から登校を諦めるのか。
先輩、サイコ、教祖さま。おばけ、シスター、モエゲーム。
性別とか性癖とか嗜好とか、出身とか世代とか職業とか、人々にはどうしてもタグが必要なのだろうか。その一つ一つには何通りの説明がつくのだろうか。説明をつけなければ個体として認められないのだろうか。
審判の声が聴こえた。
上がった息から熱を吐く。
『6-0』に捲り替わるスコアボードから目を逸らし、ラケットをカゴに放った。
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