2 #日向化成

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 ガラス張りのアコーディオンドアの内側で、小さなカフェテーブルに開いた冊子の綴じ目を片手で押さえ、日向はイスに背を預けている。  向かいのイスには、彼が通学に使っているレザーバッグが着いている。  黒い釦の白いシャツ、グレーのジレ、よく見れば学校指定の黒いパンツは、教室にいた時と変わっていない。  記憶に新しい背格好はそれでも、大学生どころか社会人のように、橋崎の目に映った。  よほど長いこと立っていただろうか。  視線の糸を手繰るように、日向の横顔はゆっくりと橋崎を仰いだ。いつもやんわり眠たげな目を、ほんのわずかに瞠り、微かに唇を笑わせた。  運び出した足が店のドレスコードに触れる心配はしなかった。  身バレ防止を兼ねたサマーニットもキャンバストートも、いかにも高校生なデザインではないつもりだし、席の埋まった店内には大学生らしき、勉強中の人たちも見られる。  ただ、消しゴムのカスをばら撒いているテーブルはない。
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