2 #日向化成

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「何も食べないの?」 「噛める物はね」  そういえば、日向が食事しているところを見た記憶はない。昼休みはマグボトルを机に置いてスマホか昼寝している。 「腹減らない?」 「空いてるよ。でも慣れかな」 「何時までいる?」  ふと日向は視線を宙に浮かせ、店内を一望しつつ冊子の下からずらせたスマホに、目を下ろした。 「俺は8時過ぎまで。(ひかり)に連絡しなくていい?」 「え」 と、声を出してから思い当たった。ひかり、神戸の下の名前だ。  だが橋崎の中では、バイトの連絡を交わす対象は『中野』だ。 「着いたら教えろって言われてない?」 「あ、うん。駅着いた時に入れた」  聞き入るような聞き流すような仕草で日向は頷き、マグカップを口に運んだ。  沈黙が流れ、店内に小さく流れている音楽に初めて気付く。  もっと色々、日向には聞いてみるべき事柄がある。だがなかなか糸口が見つからない。二人きりで話すのだって、不思議と彼があまりそう感じさせないだけで、今が初めてだ。
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