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「橋崎くん、男の人好きなん?」
春の名残る風が髪を揺らす6時間目。
校舎に跳ね返る掛け声がグラウンドに木霊している。
まばらに動き回る藍色のジャージの群れ、低く空を飛ぶ色褪せたテニスボールを、橋崎は一瞬だけ振り返り、また前を向いた。
神戸は水飲み場の縁に腰掛けている。橋崎と同じ方へ向けていた目を手元に落とすと、白色がくすんだラケットを水平に構え、ガットにボールを乗せた。
橙色のフーディーに半分隠れた神戸の顔を見下ろして、橋崎は口を開く方法を探した。
けれど具体的なことは考えていなかった。
黄色い陽射しに染まった頭には午後の停滞感が漂っている。
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