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彼は秋山律(りつ)
高校時代の大部分、2年半付き合った元カレだ。
高校卒業後の6月。
忘れもしない私の誕生日の前月に律から別れを切り出された。
「俺たち距離をおこう」
目の前が真っ暗になった。
ブラックホールに吸い込まれていく気分だった。
わんわん泣いて泣いて、目がすごく腫れたのを覚えている。
ただ、幸いにも私の大学生活は忙しかった。
看護学部だからなのか私の要領が悪いのか、すべきことが多くて哀しみの中にずっといるわけにはいかなかった。
彼氏も作らずに勉強をがんばり国家資格を取って卒業。
初めての職場では慣れない環境の中、毎日がむしゃらにやってきた。
そのおかげで、ナース3年目の今は休日を楽しむ余裕もできてきた。
律のことは…すごく好きだったので完全には吹っ切れていなかったけど、時が経つと事実は受け入れられるもので街中で律を探すことも無くなっていた。
たまに部屋の掃除をしていて卒業アルバムなんか出てくると律を探してしまう時もあるが、(私はフラれたんだ)と、すぐアルバムを閉じた。
そして、そんな少し未練がましい気分になった時は、こう思うことにしている。
(もし同窓会で律に会う時があったらすっごくキレイになってて、仕事もバリバリのかっこいい感じで、ええと、とにかく別れたこと後悔させるくらいキレイにならなきゃ)
そう、そう思っていた。
なのに、なんで今日に限って…!
こんなだらしない格好の日に会えちゃったの…
今の私は履き古したジーンズに着古したTシャツ、安物のサンダル。
髪の毛は洗って乾かしたまんま。
もちろんノーメイクで、マスクですっぴんを隠し…。
あー、もう、本当、なんで今日の今なんだろう。
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