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「おやすみなさい」
私は腕を枕にして眠る。
昼下がりの教室の中、気温もちょうどいい。
お腹もまんぷく、鳥の声とほどよい教室の雑音。
眠るには最高の日だ。
「こらこら今から数学の時間ですけど、
なに教室のど真ん前の席で眠ようとしているんですか」
ハゲおやじ先生が嫌味っぼく言ってくる。
私はもう夢と現実のはざまで揺れている。
「眠いから眠ります」
「あのなぁ、教師の前でどうどうと眠る宣言するとは
どういう根性しているんだ」
私はもう眠落ちした。
ハゲおやじ先生の声が子守唄になっている。
何か私に話しかけているようだが、もう聞こえない。
グーグー
夜になった。眠る時間だ。
当然、私は眠れない。
アロマがいいと聞いて炊いてみる。でも眠れない。
間接照明にして部屋を暗くしてみるといいらしい。
でも眠れない。
温かい牛乳を寝る前に飲むといいらしい。でも眠れない。
寝る2時間前にお風呂に入るといいらしい。眠れない。
しょうがないから数学の勉強をやってみる。
スラスラ
夜はなんでこんなに頭がさえるのだろう。
数学だってお手の物。これなら授業に遅れることはない。
私に分からない問題はない。
次の日の数学の時間。
また瞼が重くなってくる。
今日は3時間目だから、お腹はすいているのに眠くなる。
毎晩眠不足なので、
睡眠時間獲得のため眠くなったら眠るようにしている。
どこかで読んだ。
睡眠時間は一日合計8時間ならいいそうだ。
この眠くなる数学の時間は貴重な睡眠時間だ。
「おやすみなさい」
ハゲおやじ先生が、私の横でプルプル怒りに震えている。
「お前は昼の後も前も自由自在に眠れるんだな」
何を言われても、私には子守歌。
私のスマホには小さな赤いランプが光っている。
次の日、数学がなかった。
これでは私の貴重な睡眠時間がとれないではないか。
ほかの教科でも寝てみるが、眠れない。眠くならない。
結局、きょうは昼間眠れなかった。
夜になった。
これで眠くなれなかったなら、
きっと体に害が生じるかもしれない。
背が伸びなくなるかもしれない。
肌が荒れるかもしれない。
乙女の絶対絶命の危機がせまっている。
睡眠は大事だ。
でも眠れない人はどうしたらいいのだろう。
何をやっても私の不眠症は無敵なのだ。
きっと今晩も眠れないのだろう。
「おやすみなさい」
ベッドに潜り込んで布団を鼻までかけた。
目を閉じ寝てみる。
グーグー
私のベッドの横の小テーブルにスマホが置いてある。
そこから、ハゲおやじ先生の数学の授業の声が聞こえる。
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