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1.殺猫者
(ウゥ~~ゥゥゥ~~……! ウゥ~~ゥゥゥ~~……!)
「前の自転車!止まりなさい!」
オレはパトで自転車の男を追跡していた。その男は初老のくせにやたらと速いし、どうも地元の男らしく狭い路地裏の道をよく知っていて、パトが通れないような狭い道を快足で飛ばしていた。
「もし子供が出てきたらどうすんだよ!」
とオレはマイクを使わずにパトの中で叫んでいた。「シロ、悪いが次にどっちに曲がるか読んでくれ!」
パトにはオレの他に、クロとシロの猫達が乗っている。この二人は駐在所の同居人で、クロはオレと頭の中で話ができるし、シロは人を見るとその人の思考が読める不思議な能力を持っている。敵に回したヤツは、ひどい目に遭うこと間違いなしだろう。二人とも未来から来たと言っていた。
その時クロが、「右よ!山の方に向かうとシロが言ってるわ!」
「わかった、サンキュー!」
ここまで追跡できたのもこの二人がいてこそだった。
………………
15分ほど前に遡る。
シロが散歩しているとき、「仔猫はいないか……仔猫を殺したい……」
と考えてる男を見つけたらしく、すぐにクロを通じてオレに知らせてきた。
その時オレはちょうどパトロール中で、ちょっと離れた場所にいたので、すぐにクロのいう場所に向かった。
猫をいじめたり殺したりすると、「県動物の愛護及び管理に関する条例」(俗にいうペット条例)に違反することになり、罰金などがある。しかもその猫が人の飼い猫なら、「器物損壊罪」にもなる。許しておけない罪だった。
クロの言ってた場所に到着するなり、
「ニ”ャ”~~~!!!」
と猫の声。すぐに男が出てきて、パトを見て逃げ出した。すぐクロとシロが合流し、「アイツよ!」
と教えてくれた。今ヤツは、大人の猫にナイフを刺して逃げたらしい。
オレは、「ペット条例違反だ、追うぞ!」
………………
といういきさつがあってクロとシロを乗せ、ヤツを追っているというわけだった。
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