1.殺猫者

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山の方に向かう道は、パトがギリギリ通れる幅で、しかも未舗装で大きめの石が転がっている道だ。自転車なら、走るのは容易ではないだろう。 すぐに追いついた。 いきなりヤツは自転車を降り、自転車を道の真ん中に放り捨てた後、そこから左の土手を少し走って、その下にあった線路に飛び降り線路の上を北に向け走り出した。俺たちもパトを止め、同じルートで線路に降りて追跡する。 50mほど進むと、その先に電車のトンネルが見えてきた。ヤツは迷わずトンネルに入って行ってしまった。 「続くぞ!」 とオレはクロ達に言って走る速度を上げたところで、クロが、 「待って!電車が来る!」 と警告を発した。 しかしオレには何も聞こえない。線路の上に立っているクロだからわかったみたいだ。 「どっちからだ?」 「たぶんうしろ。すぐ来るわ!」 マズい……後ろからだとヤツは気づくのに遅れて轢かれるかもしれない。もうトンネルに入っている……このトンネルは300mくらいあったはずだ。向こうに出る前に追いつかれちまう……。 と思った瞬間、「タタン・タタン……タタン・タタン……」 と電車の音。オレにでもわかるくらい近くまで来ているようだ。 「マズい!逃げろ!」 と叫んでみんなで横に飛んだ。直後 「パアァーーーーーーーーーーン!」 と警笛を鳴らしながら電車はトンネルに入って行った。間一髪だった……。 電車の後を追うように、オレ達は続いてトンネルに入った。ヤツが轢かれているとすれば入ってすぐの辺りだがそれらしい形跡は何もない。走りながら暗闇に目の利くクロ達に線路上を見てもらったが、ヤツの姿はどこにも見当たらなかった。 クロに「臭いはどうだ?!」 と聞いたら、「犬じゃないからそれほど当てにしないで!」 と言われてしまった……。結局トンネルを抜け反対側に出ても見つけることはできなかった。「逃げられたか……」 パトの所に戻ってヤツの乗っていた自転車を調べたら、盗難車とわかった。もう手掛かりは残っていなかった……。  クロから以前話を聞いたことがあったが、クロ達が最初にあいつを見つけた時もクロ達の目の前から消えるようにいなくなったと言っていた。  それが、今回も状況は違うものの同じようなことが起きている。これはただ事ではないのかもしれないな……。
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