Ⅱ「眠りの加護」

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Ⅱ「眠りの加護」

 ……話は50年の昔に遡る。  その頃、俺とユラの住む国は、白魔術師と黒魔術師による、血で血を洗う抗争のまっただ中にあった。   戦いの最中、俺とユラは素質を見いだされて、白魔術師となるべく訓練を受けていたのだ。だが、情勢は、次第に俺たちに絶望的な方向に傾いていく。勢いを増した黒魔術師たちは、白魔術師という白魔術師に対し殺戮の限りを尽くし、俺らの仲間だった多くの白魔術師たちも、抵抗虚しく命を落としていった。  そうとなれば、ただでさえ魔術の取得も覚束ない俺とユラも、黒魔術師の餌食となるのは、もはや時間の問題だった。 「お前たちを「眠りの加護」に託すことにする」  ある日、俺とユラを前に、師匠が言った。 「お前たちはまだ未熟な白魔術師だ。このまま、この戦の中にいては必ず命を落とす。だが、未来あるお前たちの犠牲は、なんとしても避けたい」  そして師匠は重々しく俺たちにこう告げた。 「明日、お前たちに、セセラの実の入った茶を与える」  俺は驚いた。横にいるユラの顔も、同じように驚愕で歪んでいる。それも当然のことだ、何故なら、セセラの実といえば……。 「セセラの実……! 口にした者を仮死状態にする作用のある毒草、それを……」 「そうだ、よく勉強しているな。流石、儂の自慢の弟子だ」
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