Ⅳ 再会

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Ⅳ 再会

 それを誇示するかのように、数日後、洞窟に流れていた平穏は唐突に破られた。俺が目覚めた事で流れ出た魔力の気配を、黒魔術師どもが嗅ぎつけたのだ。  たちまち俺の潜んでいる洞窟は囲まれた。その報を老婆から聞いたとき、俺は、これまでかな、と哀しく笑った。50年来の眠りを経ても、俺は生き延びることが叶わなかったというべきか。  だが、これでいい、と、どこかで納得している自分もいた。師匠には悪いが、これでユラの元に逝けるのなら、それでいい。心のなかの刹那が高らかにそう謳っている。  俺は、寝台からゆっくり起き上がり、白魔術師としての身支度を50年ぶりに調えた。そして懐かしい魔杖(まじょう)を握ると、敵を迎え撃たんと洞窟を出ようとした。  ところがだ。そんな俺の前に立ちはだかる人影があった。  果たしてそれは、あの世話役の老婆だった。彼女は俺を見るや、強い口調でこう言い放った。 「お前さんはまだ完全に覚醒していない。ここは、私に任せなさい」 「……そんな、あなたに何が出来るというのです……!」  そう言って彼女を見たとき、俺ははじめて、老女も俺と同じく、己の魔杖を手にしていることに気づく。そして次の瞬間には、老婆の放った魔力が俺の手足を絡み取り、同時に、巻き起こった風の渦により俺の身体は洞窟の奥へと吹き飛ばされていた。 「……なっ……!」
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