華村ビルの人々

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「──三階には瀧川(たきがわ)凛太郎(りんたろう)って子がいるんだけど……」 「瀧川凛太郎、さん?」 「彼、ちょっとした問題児なんだよね」と花音は眉間に皺を寄せた。 「それはどういう?」  花音を悩ませるくらいなのだから、よっぽどの人物なのだろう。 「凛太郎はね、目つきが鋭くて、身長もあるから、妙に威圧感があるんだよね」  その容貌に、なんとなく心当たりがあった。 「それに口も悪くて。……あと、態度も」と花音はほとんど悪口のようなことを(のたま)う。  ──それって。  咲の頭の中に、エレベーターで遭遇した男の顔が思い浮かんだ。 「だから、いきなり出会すとびっくりすると思うんだ」 「──それなら、たぶん、もう会いました」 「え、会った?」  花音がキョトンと咲を見た。「どこで?」と慌てたように尋ねる。 「ここに来る前にエレベーターで」 「大丈夫? 何もされなかった?」 「はい、大丈夫です。……でも、花音さんのいうとおり、口も態度も悪かったです」  咲はさっきの彼の言動に腹立たしさを覚え、ついハッキリ口にしてしまった。 「あ、やっぱり?」と花音は苦笑した。 「咲ちゃんが、そこまでハッキリ言うんだから、よっぽどだよね」  ──はい、よっぽどです。初対面の人間を貧乳呼ばわりするのは。  咲は心の中でぼやき、曖昧に笑った。
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