Ⅰ 盗品の捜索にはいつもの探偵を

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「ちょ、ちょっと待ってくだせえ! それって大事件じゃねえですか! 俺の手には余りますぜ。てか、そこは探偵なんかじゃなく、大々的に衛兵動かすべきでしょう!?」  当然、俺はその一大事に声をあげて疑問を呈した。  んな大それたお宝と犯人の捜索、普通に考えて一介の名もなき探偵に任せるような仕事じゃねえ。 「バカ者。皇帝陛下へ献上するディアマンテ(※ダイヤ)が盗まれたなど表沙汰にできるか。隠密裏に解決するため、そなたのような地位も名誉もない下賤の者に頼んでおるのだ」 「このことが世間に知られれば、正使のティへルーノ公亡き今、副使である私もタダではすまないでしょう。その点、身分低く信用もなきあなたなら、万が一、この話をどこかで吹聴したとしても、聞く価値もないホラ話と一笑に伏すことができます」  随分とヒドイ言われようだが、確かにその通りかもしれねえ……この大失態の後始末、公に衛兵を動かせねえから影で俺を使おうっていう魂胆か。  なんとも失礼な貴族二人の回答に、苦虫を噛み潰したような顔をしながらも、俺はいたく納得してしまった。 「それにな。このディアマンテにはちょっと因縁めいた話があってな。手にした者には呪いが降りかかり、必ず不幸が訪れると申すのだ。ま、ただの迷信だと思うが、そなた、そっち系(・・・・)が専門じゃろう?」  さらに総督は、そんな気になる話もサラッと続けて付け加える。 「へえ……呪いのダイヤですかい……」  ま、おっしゃる通りたぶん迷信なんだろうが、そのなんとかいう正使は実際に不幸な死を遂げちまってるからな……。 「どうせそなた暇しておるんじゃろう? 我らが帝国と皇帝陛下の御ためと思うて協力せい」 「無名の人物ながら、なんでも腕は確かだというお話。報酬の方ははずみます。是非ともお力をお貸し願いたい」  その呪いの話に俺が半信半疑でいる間にも、二人の貴族は偉そうな態度で重ねてそう頼み込んでくる。
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