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知恵ちゃんの手紙・・・
この手紙を書いて2年後に病で亡くなった友達が残した手紙。
大人になった由美ちゃんへと書かれている。
小学生の頃転校してきて虐められていたが私は比較的仲がよくよく遊んだ記憶がある。
一人の人間を数人で虐めるのは今も昔も変わらずあって私はそんな行動が嫌いだった。
彼女が小児がんでこの世を去るまで仲が良かった。
自転車に乗って頼まれた買い物をカゴに入れ「お使い終わったら遊ぼう」とか言った会話を思い出す。
最後の言葉は・・・「帰ってくるから待ってて。」
彼女は学校が好きだった、同じ年齢の友達を初めて亡くしたのが彼女で普段は思い出さないがたまに彼女を思い出す。
私は胸が熱くなり視界が歪む。
鼻を啜りながら「探し物あったよ。」と父親の背中に語り掛けた。
「おう!」
んっ?いつもの声ではない・・・
そっと親父の背中に近づくと親父は汚れたアルバムみたいなものをひらいて見ていた。
「お父さんこれ何?」
んんっ・・ズズっと鼻を啜る音がする。
「母さんとの写真だよ。」
若い二人が海や景色のいい場所で楽しそうに写っている。
私も見たことがない写真だった・・アルバムなら汚れることないのに少し薄汚れている。
「なんでこのアルバム汚れてるの?」
「喧嘩するたびにゴミ箱行きだったからだよ。」
あー!
二人は昔からよく喧嘩する・・最近も喧嘩して離婚だのなんだの騒いでいた。
親父は今日の出来事で自分が思った事を語りだした。
「今日な・・真っ青な顔をして倒れている母さんみてな抱き上げたら力が入っていなかったんだ。このまま自分の腕の中でコイツは逝くのかって思ったんだよ。」
救急車を呼んでいる間に親父は母親を抱いていたらしい。
力なく真っ青な顔をして呼吸も安定しない妻をこのまま・・と思ったこの衝撃はどれほどのものだっただろうか?
「喧嘩しては捨てられ俺がひらう・・また喧嘩する。そんな夫婦だったけどなこれを捨てるのは母さんが抗議していたんだよな。」
父親が探していたアルバムは両親にとっては「愛」なんだと私は思う。
父親は母を失いかけて思い出した昔の思い出のアルバム。
長年の夫婦だから母親が仕舞ってある場所の検討はついていたのかもしれないが・・あたりを見渡すとかなりゴチャゴチャにしている。
「親父~これお母さんに怒られるよ?」
そう言って様子を見ていた弟が片付ける。
私達姉弟は「喧嘩夫婦」とよく呼んでいた両親の「夫婦愛」を見た。
私は亡くした友人の手紙を・・私達姉弟は両親の「夫婦愛」父親は「妻への愛」を
探し当てたそれはとても機会がないと探さない物なように私は思った。
数週間後・・・・
「聞いてよ!お父さんがな~。」
という元気な夫婦喧嘩の愚痴の電話が母からかかってくる。
今は平和だな~と思う。
私は忘れない、亡くなった友人との友情も喧嘩ばかりしている両親の愛も・・。
だから黙って「そうなの?」と母の愚痴を聞く。
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