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たった7日ぶりだというのに、cafe暦を訪れるとすごく久しぶりな気がした。
そして、なにやらものすごく繁盛しているではないか。
手伝うために裏手の勝手口から、そおっと足を踏み入れた瞬間。
「あかりん!」
コロちゃんとマロくんが同時に飛びついてきた。
「ちょっと見ない間にねえ…」
「ええ。たくましくなったわね…」
人間の姿では大学生くらいにしか見えない二人だけど、これでも千数百年を経た大精霊なのでこうしてわたしを甘やかす。
天野へは修行という名目があり、護法童子の2人は敢えてわたしに同行せずにいてくれたのだ。
けれどこれではまるで、はじめてのおつかいみたいだ。
たいへん恥ずかしい。
「そうだ、今夜はねえ」
「お赤飯なのよ」
マロくんとコロちゃんが、ドヤァ!と胸を張る。
え……?それ、わたしのため…?
「ちょっ、ちょっ、待って!わたし、べつだん何もしてないっていうか…。むしろ迷惑だけかけてきたっていうか…」
しどろもどろでたいへん恥ずかしい。
「あかりちゃん、おかえりなさい。もち米、うるかしてあるからね」
ふんわりした声の方を向くと、かわいらしい北国なまりの女の人が。
ユラさん不在の助っ人として店長代理を務めてくれている、伊緒さんだ。
お米を水に浸しておくことを指す「うるかす」という方言は、わたしの育った北海道ではよく聞く言葉だ。
まったく偶然にも、育った町は違うが彼女は初めて会う同郷の人だった。
「甘いのにするから。懐かしいしょ?」
懐かしい言葉で懐かしい味のことを囁かれ、わたしはすぐに陥落した。
和歌山に赴任してきてからびっくりしたことの一つに、お赤飯が甘くないことがあった。
わたしの故郷でお赤飯といえば、甘納豆をたくさん入れた甘いものと決まっていたのだ。
こっちの人にそう言うとたいがいびっくりされるけど、食文化のギャップは21世紀でもまだまだ根強い。
「伊緒さん、甘いお赤飯なの?」
「伊緒さんのお国では甘くするんだねえ」
2人の童子はすっかり彼女にも懐いており、
「そうだよう。あまーくてお菓子みたいで、おいしいんだよう」
と、伊緒さんもにこにこと母性的な笑みを浮かべている。
もちろん伊緒さんは、コロちゃんとマロくんの正体が猫とカワウソの精霊だとは知らない。
ぽわぽわした3人を見ていると、ああ、とにかくこのお店を続けてもらえてよかったなあと、心からそう思う。
いつユラさんが戻ってきてくれても、ちゃんと帰る場所がここにある。
「そうだ、あかりちゃん。新メニューをかんがえたのだけど、味見してくれる?鶏さんのむね肉をね。塩麹に漬けて、桜のチップで燻製にしたの。はい、これがそうです!どじゃーん!」
見事な飴色に燻されたお肉の塊を見て、なるほどこれは……このお店は繁盛するはずだわいと思うのであった。
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