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「──ねぇ、円くん──、ちょ~っと、いいかな?」
──ホラ、敢えて話していなかった良藍に聞かれてしまいました。
「あら? お初にお目に掛かりますわ、円様の奥様の平野 良藍さん。わたくし、円様の愛人でこの国の王女を務めさせていただいている、ファナリア・テセラ・ネスハ・キュルメーラと申します。以後、お見知りおきを」
「あ~ら、あたしの事を知っていていただき光栄です、お姫様。既にご存知の通り、あたしは平野 良藍。円くんの妻です。ところで、お姫様、アナタ自分のことを“円くんの愛人”って、称してるけど、それってアナタの一方通行なんじゃない?」
「──ええ、その通りですわ、現在は」
「現在は?」
「はい。ですが、この度、円様の接待役を拝命し、円様をもてなす為にお傍に仕えられたこの好機を活かして円様からの寵愛を──いえ、一番の寵愛を賜れるよう誠心誠意努めてまいりますわ!」
「ちょっと、妻のあたしを差し置いて、円くんの一番の寵愛って、大きく出たものね?」
「そんな事、ありませんわ」
「そんな事、あるわよ!」
「うふふ……」
「ふっふっふ……」
笑顔で睨み合う、良藍とファナ。二人の視線の間には見えない火花が迸って散っているのが、幻視出来ます。
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