5500℃-06

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5500℃-06

 シャワーを浴び終えるまで、安原一子を殴る役を演じた実行部隊の男は待っていた。  湯上がりの一子に書類を出す。 「安原大尉、八体めの処理、お疲れ様です」  書類は次の目標の資料と休暇届だった。 「我々は休暇後から動けます」  安原一子は応えた。 「休暇など不要。明日にミーティングをしましょう。吸血鬼を根絶やしにするには時間が惜しいのよ」  春日井麻里の死体は棺桶に入れられ、聖別されたポプラ材の杭を胸元に打たれた。吸血鬼が蘇生しないように。  そして、棺桶はトラックで鉄鋼施設に運ばれ、五五〇〇度の溶鉱炉に放り込まれる。魂というものがあれば、春日井麻里の魂はルーマニア南部、トランシルヴァニア・アルプスへと飛んでいくのであろう──。 【了】 27.Jun.2021 【参考資料】 『新宿ゴールデン街』渡辺英綱著 晶文社 『完全武装マニュアル トカレフからスタンガンまで』銃器問題研究プロジェクト編 同文書院 『図解 ハンドウェポン』大波篤司 新紀元社 『神秘学マニア』荒俣宏 集英社
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