Chemical-10

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Chemical-10

 はんなはゴールデン街になじみたくて、鞠佳にメイクを教えてもらい、なおかつ髪を脱色し、鳩血色(ピジョンブラッド)にカラーリングをした。  カクテルの作り方もママから徹底的に教えてもらった。  もちろん、それだけでは舌の肥えた常連客やふらっと訪れたお客さんから満点をもらえるはずもなく、ただ、筋はよいのでバーテンダー・スクールに通えば、との評だった。  はんなは真面目で、普通はやりたがらないお店の掃除などにも積極的だった。  仕事を終えてまた花園神社を経由してラブホテル街へと向かう。今日ははんなの提案で、医療プレイのための部屋だった。 「ねえ、はんな、あたしと一緒に暮らさない?」 「鞠佳はいいの?」  うん、と鞠佳。ふたりともすでに裸だった。 「そろそろまた血を吸ってもいいかな?」 「いいよ」  はんなはベッドの上で髪をたくし上げ、首筋やうなじを(あら)わにした。すかさず鞠佳が犬歯を立てる。麻薬のようななにかがはんなの血にはあった。  はんなのもともとの血と、処方されている薬の種類や量が奇蹟を起こしているのだろう。  血を吸い終わり、鞠佳はとろんとした眼で仰向けになっていた。はんなは法悦の余燼(よじん)を引き延ばしてあげようと、鞠佳の右手首を優しく掴み、そうしていつものように舌技をふるった。そして、身体を密着させたままはんなは鞠佳に気づかれないよう枕の下に右手をすべらせる。  金属の手触り。  工作部隊の仕事だ。  微かに鞠佳があえぐ。  ──今だ。
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